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「ぴぃええええええええーん!! ま、待ってよぉ~!」
その後を泣き叫ぶ優芽が追いかけ、それらを見守らんばかりに最後尾にカイが続いた。俺達は知らず知らずの内に、誰もが通っていないだろう荒れ果てた林道を見つけ走り続けていた。
辺りはすっかり夕暮れ。道はどんどん狭くなり、光は木々に際切られ、辺りはしっかり薄暗くなりはじめている。
それでも香苗は走り続け、俺達はそれに続く。しばらく走っていると見たことも無いような不思議な光源が見えてきた。それは時折、発光している。その光の前で香苗は立ち止まった。
香苗が止まり、俺も止まり、遅れて泣きじゃくる優芽と冷静な眼差しのカイが追い付いた。
「ぴぃええええええええーん! 何だってのよ~! もう~!」
「拓也、ここは何だ……?」
「さ、さあ……?」
突然に浴びた光のせいで目がよく見えなかったが、時間をおいて目が慣れてくると、周辺の光景が少しずつ分かってきた。
辺りには円乗の広場が広がっており、その中心には朽ち果てた社があった。
その正面には、発光する小さな光の玉がある。どうやら光源の正体はこれのようだ、先程の声はその中からする。
(誰か……あたしに力を貸して、誰か……力を……)
「ひぃいいいぃ幽霊!?」
優芽が叫ぶと謎の声は答えてきた。
(あたしは幽霊なんかじゃないもん!)
「ひぃいいいぃ答えた~!?」
「優芽、落ち着け!」
仕方ないので俺は優芽の肩に手を置くと顔を近づけた。一瞬で優芽の中での空気が変わっていった感じがする。不思議と優芽は静かになり何故か顔を赤らめた。
優芽は少し下に俯き自分の人差し指同士をつんつんとぶつけ始めた。
「いや別にこれは、そう言うつもりで恐がってた訳じゃないの。だからそんな顔を近づけられると恥ずかしいじゃない。別に嫌じゃ無いけど、いやでも嬉しいって訳じゃないのよ。そうじゃなくて、そのその!! ぶつぶつぶつぶつ……」
なにいってるんだ? こいつは……まぁ、取り敢えず静かになったのでいいだろう。
俺は再び謎の光の玉を凝視する。
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