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「その光の玉の中の主、お前は何者なんだ?」
(あたしは精霊、助けて欲しい。あたしに力を貸して欲しい。この中に手を)
光の主はそう答えが、俺はそれに答えられなかった。
不気味すぎるし何かの罠かもしれない、そう考えているといつの間にか香苗が光に手を伸ばしていた。
「今、行くからね!」
「待て、香苗!」
俺は止めようとしたが、突然のことに焦って足を滑らせ、そのまま香苗よりも先に光の中に手を突っ込んでしまう。
「拓也!」
優芽の声が聞こえると同時に、一瞬の焦りとともに心臓が止まりそうになった。
「俺は何をしたんだ! どうなってしまうんだ!?」
頭の中を落ち着かせ冷静なろうとしていると、光の一部が手首を包みブレスレットの様な物にかわると自分の手首まとわりついていた。
「な、なんだこれは!?」
直後、周囲を眩いばかりの閃光が包んだ。しばらくすると閃光は収まり、気づくと手に何か柔らかいものを掴むような感覚が残されていた。
少しずつ心は落ち着いていく。正面をよく見ると、そこにはブロンド色のセミロング、頭からは鹿のような角が左右に生えた、薄紅色の瞳の少女の姿があった。幼稚園くらいの身長で、くりくりお目目の可愛らしい女の子がプカプカ浮かんでいる。
そして俺は、その女の子の手の平を握っていたわけだ。
「ふー! や~っとこっち側に出られたよ~ ありがとう……あたしの名前はメブキだよ~!」
そう言うと、メブキと名乗る幼児はふわふわ降りて地面に足をつける。
「でも何だか眠くなっちゃった~ 詳しいことは後ででね~ ここに置いてかないでよ」
そう言うとメブキはそのまま、すうすうと眠りについてしまった。
しばらく場面は硬直する。
少しして4人が一斉に声を上げた。
「「いきなり寝るの!? 」」
奇跡的なタイミングで一同がハモる。思わず、お互いの顔を合わせ苦笑いをしていた。
お陰でさっきまでの不気味な雰囲気は、すっかり何処かに飛んでいってしまったようだ。
「あの、この子はいったい?」
「わからない……」
時間もだいぶ過ぎていたので流行る気持ちを抑え、眠るメブキを背負いその場を後する事にした。
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