再会

21/21
2149人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「とりあえず、パンケーキ行くか。」と薫ちゃんは笑って立ち上がり、私の手を引いた。 私はおとなしく手を引かれる。 「難しく考えないで、とりあえずやってみれば? 誰も困らないでしょ。 キッチンには業務用のオーブン入れて必要な道具も揃える。 好きなだけ、ケーキを作れば良い。 俺もいつでもケーキを食べられてお得。 細かいルールは暮らしながら決めればいいし、 どうしても嫌だったらやめればいい。」と私の瞳を覗く。 頭の良い薫ちゃんには何を言っても言い返されそうな気がする。 なんだか 丸め込まれそうだ。 地下の駐車場には、薫ちゃんの高級な黒い車の隣に真っ赤な可愛い自転車。 「就職祝い。チビスケの新車。高校の時、チャリ通だったろ。」 と私のイニシャル、Tの飾り文字のキーホルダーのついた自転車の鍵をつまんで私の目の前に出す。 …降参だ。 「…ありがとう。」と掌を出す。 「交渉成立。」 と薫ちゃんは満面の笑みで私の掌に鍵を乗せた。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!