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最近は湯船に浸からずにシャワーだけで過ごす人が少なくない、という話を聞いて少々驚いた。 なんてもったいない、と。
薪にまで遡らずとも、ついこの間まで風呂に湯を張るのは確かに少し面倒臭かった。 他のことに気を取られている間にお湯がざんざんと溢れたり。 いざ浸かると生ぬるかったりと。
だが今は違う。 少なくとも我が家の風呂は違う。
ボタン一つで好みの温度、好みの湯量が溜まってピタリと止まる。 おまけにそれを電子音で知らせてくれる。 いや別に最新の風呂じゃない。 築二十年ほどのマンションだから、今では多くの家がこういう仕組みになっているだろう。
そして、これは今でも私にとってはポップなエンターテイメントだ。
最近はスマートフォンとセットで鳴らす無線のスピーカーも安く手に入るようになった。 もちろん風呂場で使える防水タイプだ。 浴室にスマートフォンを持ち込む、袋のような防水ケースもたったの百円で売られている。
スマートフォンは今では壮大なジュークボクックスに化けた。 自分が仕込んだ好みの音楽だけでも数え切れない曲が詰め込まれているし、それでも飽き足らなければネット経由で世界中の音楽サービスを聴くことができる。 あるいは朴訥に地上AM局のニュースに耳を傾けるのもまた一興だ。
何より風呂の中では音が良い。 喉をうならせる趣味はないものの、おかげで数千円のスピーカーでも幸せになれる。 最近、好きな曲をイヤホン以外で聴いたことがあるかい? ここなら少々大きな音量で聴いても大丈夫だ。
ネットから流れてくる見知らぬ曲が素晴らしければそれも良い。 良い曲との出会いは、まさしく一期一会だ。 うまくいけばセットリストを後から探し、自分のライブラリーに加えることもできる。
ただし、あまり調子に乗ってはいけない。 ぬるめのお湯の半身浴でもない限り、気分に合わせた曲を数曲というのが最適だろう。 アルバム一枚や、クラシック全章はやめておいたほうがいい。
そして、もし入浴時間が夕方ならさらに幸福度はもっと増す。 陽がいつまでも残る季節は当然としても、つるべ落としの時期であっても夕風呂は格別の幸福を与えてくれる。
そんな時間に風呂に入るような生活はしていない?
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