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日常の中の非日常
普段なら絶対に着ないだろう墨色の縦縞ストライプ、背抜きのジャケットの下には生成の麻シャツ。わざと開けた胸元には細い銀のネックレス。どれもこれも繊細で、ちょっと指を引っ掛けたなら容易にちぎれそうなものばかり、敢えて選んで身に付けてきた。
薄い色合いのグラサンで視線の方向を隠し、これまた普段は吸わないメンソールの華奢な煙草を銜えて待つ。通りの向こうからしきりにこっちを窺ってるアイツに、ちょっとした悪戯を仕掛ける為の出来心。俺ってホント、ヒマな奴……。
けど、今日くらいは多少ハメ外したっていんじゃない?
いつもはぜってー言えない台詞も、今日なら言える気がすんの。
照れ臭くてできねー誘いも、今日ならきっとできそうな気分。
バクつく心臓を抑えてアイツをベッドに誘ったら、俺の方から押し倒してヤツの腹にまたがって――
戸惑うヤツを見降ろしながら大胆なくらいの仕草で脱いで見せる。ベルトをゆるめて、ジッパーを降ろして、そしたら少しくらいはヤツの欲情に灯を点けることができるだろうか?
体勢を覆して俺を組敷いて、このちぎれやすいヤワなシャツを引き裂くくらいに余裕を無くしたアイツの顔が見てみたい。
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