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いつでもやさしく、照れ臭そうにしながら抱かれることが不満なわけじゃ決してない。だけどたまには激しく乱暴なくらいにされてみたいって思うのは贅沢な望みなんだろうか?
息継ぎもままならないくらいの濃いキスで掻き回されたい。こっちが辛くて、やめてくれって懇願するくらいの乱暴な愛撫で全身を掻き毟られてみたい。そうだよ、一度でいいからめちゃくちゃに愛されてみてえんだ――!
◇ ◇ ◇
「うわ、エッロ! 何これ――?」
テーブルの上に置かれていた台本のページをパラパラとめくり、そう言ってニヤッと口元をひん曲げたのは氷川白夜だ。癖のない長めの黒髪を形のいい指先ですくい上げながら、彼の長身には窮屈そうなパイプ椅子を引いて腰掛ける。ここは役者たちの所属事務所の一室だ。
今現在、約十名程の男優の他に、ごくたまに契約で派遣されてくる女優が極僅かといった規模のこの事務所では、いわばボーイズラブ、メンズラブと称される男性同士の恋愛をテーマにしたドラマを制作している。氷川はそこで活動している役者というわけだ。
「おい、勝手に弄るじゃねえ。それ、俺ンだ」
氷川の広げていた台本をヒョイとかっさらい、その対面の椅子を無遠慮に引いて腰掛けたのは一之宮紫月、彼もまたこの事務所に所属している役者の一人である。
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