BOURBONにシュガーを4つ

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「なぁ氷川、俺はさ、あいつが……紫月が役者になるって言い出した時から心は決まってっから」  まるで独り言のようにそう呟いた遼二の横顔がひどく大人に見えた。おそらくは秘め隠しているのだろう嫉妬や戸惑いの感情を、その端正な横顔に閉じ込めたまま、それは確かに憂いを伴っているにせよ――だがしかし、穏やかな表情の中に強い”芯”を感じさせるようでもあって――そんな親友を間近にしながら、氷川もまた温かな思いが湧き上がるのを感じていた。それは格別の友情とでもいおうか、氷川はこの遼二と紫月が末永く幸せでいてくれればいいと、心からそう思うのだった。 「つまりは何だ、お前らってそんな昔からデキてたってわけな?」  軽口で返しつつおどけてみせる氷川を横目に、そんな彼の細やかな気遣いが心にしみる。遼二は手にしていたグラスを差し出し、二人は互いの気持ちを乾杯に代えて、軽くグラスを突き合わせたのだった。 ◇    ◇    ◇
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