日常の中の非日常

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 相槌を返しながらふと目の前のテーブルに視線をやれば、淹れたてらしい湯気のたったコーヒーが二つ並んでいる。遼二は迷うことなく氷川の飲んでいた方のカップを取り上げて、旨そうに一口をすすった。 「あっ! おい、こらっ……! それ、俺ンだ」 「ああ知ってる。ちょっともらっただけだ、ケチくせえこと言うなよ」 「何で俺のなんだよ。紫月の飲みゃいいじゃん」 「ああ? だってコイツのはめちゃめちゃ甘いし。てめえのはブラックだろ?」  これまた当たり前のように言われては返す言葉がない。ほぼ毎日を共に過ごす中で、互いの嗜好をよく知り尽くしているのだ。遼二は悪気のかけらもなく、もう二口程をすすると、カップを氷川の前に戻して飄々と腰掛けた。そして見るからに暑そうな革ジャンを脱いで背もたれに引っ掛ける。すると今度は相反して裸も同然のようなタンクトップ姿になった様子に、苦虫を潰したように氷川が片眉を吊り上げた。 「は、今日もバイク出勤ってか? 炎天下の中、革ジャンってさー、ご苦労なこったな! つーか何、このエロタンク……乳首が透けて見えてんぜ?」 「はぁ!? 見えねえって! コレ黒だし……」 「いーや、見える! てめ、またそんな格好で紫月をコマすつもりかよ」 「コマすって何だ、バカッ……! 人聞きの悪ィこと言ってんなよ……」
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