5回までオトコノコ

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 慌てて着いていくと、向かったのは一階の階段裏だった。陸に倣って、私も隣に座る。 「……授業はじまっちゃうよ?」 「いいよ、今は授業サボりたい気分。幸せすぎて教室に戻りたくない」  奥まった場所のため、廊下からは死角になっていたけれど、覗きこまれたら見つかってしまう。足音や声が近づくたび緊張して身を縮こませていると、陸が笑った。 「別に見られてもいいよ。噂されたって平気、オレのだって自慢したいぐらい。それよりも――」  ずい、と陸が身を寄せる。先ほどのお返しとばかりに、今度は私が壁に追いつめられる状態だ。 「言った通りになったでしょ?」 「陸の言う通りって……えっと、」 「オレ、欲しいものを手に入れようと企んじゃう男だから」  その言葉を反芻する間はなく、腕を回されて、強く抱きしめられる。そして聞こえてきたのは、もやは弟のような存在ではない、男の人の甘い声だった。 「ずっと手に入れたいって思ってた。抱きしめて、ひとりじめして、美空をオレだけのものにしたかった」  私の髪を撫でて、頬を撫でて、それから唇に触れる。それだけの動きなのに、私の頭にも刻み込まれた言葉が甘く疼いてしまう。 「ねえ、六回目は美空が言って」  今度は、私から刻みつける。  六回目の『好き』。
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