5回までオトコノコ

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***  陸の言った通り、雨の日が続いた。大雨ではないけれど傘が必要になる程度にしとしとと降る雨は、一人で登校するようになってしまった私の気持ちと似ていた。  その日の朝も、雨が降っていた。ずるずると長引く雨に憂鬱な気持ちになりながら傘を開く。そして一人で学校に向かっていた時だった。 「陸くん、宿題やった?」  その名前に振り返って――見ては、いけなかったのだと後悔をした。  通学路には生徒たちがたくさんいるというのに、あの廊下の時と同じように、見つけてしまったのだ。  陸と、その隣には一年生の女の子。  二人で一本の傘を使って、親しげに話している。まるで私が想像していたような恋人同士の姿。  傘も雨も、色々なものが滑り落ちていく。私の周りだけ大雨が降ってしまったかのように、ごちゃごちゃとした感情が残る。  五回も告白を断ったのだから、こんな結果はわかっていたはずなのに、今になって気づいてしまう。  鼓膜が、寂しいと泣いて、求めていた。  六回目を聞くことはないのだろう、陸の声を。  五回も刻まれた陸の『好き』が、今度は私じゃない誰かの耳に刻まれる。あのデザートよりも甘い声で、名前を呼ぶのかもしれない。  それは私ではない、あの女の子。 「やだ!」  叫ぶと同時に私は走り出していた。  放り投げた傘の行き先も、水たまりを踏み抜いたことも忘れて、ただ走った。  胸が痛くて、苦しくて、解放されたくて――陸の手を掴んだ。 「えっ、ねーちゃん?」 「来て!」 「ちょ、痛っ、ひっぱるなって……!」  だって、陸のことが好き。  好きだから、この手を離したくない。  意識してこの関係が崩れてしまうのが怖かったから、陸は弟のような存在だと言い聞かせていたけれど、あの指先や声が他の女の子に向けられてしまうのは、もっと怖い。  こんな形で私と陸の関係が終わってしまうのは、もっともっと怖い。  静止の声も聞かず、陸の手を掴んだまま学校に向かう。周りから見れば三年女子が一年男子を引きずっていく光景で、変な噂が流れるかもしれない。でも構わなかった。
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