5回までオトコノコ

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5回までオトコノコ

 五回目まで、意識していなかった。 「オレ、ねーちゃんのことが好きだよ」  これで五回目。先月から聞き始めたこの言葉は、ポップコーンが弾けるような軽さで紡がれた。  固まっている私に対し、(りく)はニタニタとからかうような微笑みを浮かべて、返答を待っている。この言葉の真意を読み取りたくてその顔を見つめるけれど、わかりそうにない。そういえばこのやりとりも五回目だった。  きっと、からかっている。私はすっと短く息を吸いこみ、動揺と一緒に飲みこんだ。 「私も陸のことはカワイイ弟みたいな存在だと思ってるよ」 「うわ、そっけない。付き合ってくれないの?」 「毎朝付き合ってるでしょ。一緒に登校してるんだし」  陸の言うお付き合いとはいわゆる『彼氏・彼女』の関係であって、一緒に登校することだけではない。高校三年生になった私にもそれぐらいの知識はついていた。  恋愛経験はないけれど、胸がときめいたり苦しくなったり、そういうものが必要なのがお付き合いなのだと思う。  陸は、隣の家に住む幼馴染で二歳年下、小さな頃から弟のように扱ってきたのだ。私の部屋でくつろぐ姿を見ても、胸がどうにかなってしまうような、恋愛を思わせる感情は沸いてこない。
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