さよならはエスプレッソ-エネゴリ君を添えて-

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さよならはエスプレッソ-エネゴリ君を添えて-

その日はついにやって来た。 珍しく静岡に遊びに来ていた彼を、私は私オススメのホテルのランチに連れて行った。 このホテルのランチはハーフコースが安く食べられるだけでなく、席は半個室、従業員の教育もしっかりしているという点が素晴らしかった。 さらに食後には美味しい珈琲がおかわり自由というサービス付きだ。 私達は何気ない会話をしながら食事をしていた。 そして食後、珈琲が運ばれてきた。 彼は1口2口飲むと、珈琲を飲むのを止めてしまった。 「どうしたの?」 と私が聞くと、 「これ薄い。」 という返事が返ってきた。 その一言で、私は今まで積もりに積もったものが爆発してしまった。 「お前はエスプレッソでも飲んでろ!!」 私はテーブルを叩いて怒鳴った。 味覚の違いは、恋人同士では致命傷であることにようやく気付かされた。 今まで楽しい事は沢山あったが、こうも味覚がずれているのでは、一緒に暮らす事はできない。 私はこの日、彼との別れを決心した。 彼と別れてから数日後、彼からLINEが送られてきた。 何かと思えば、 「お弁当コンテストに参加してみました♪」 というもので、どうやらキャラ弁に挑戦したらしい。 一応写真を見てみると、チーズで作ったと思われるエネゴリ君のお弁当が映っていた。 …一体どういうチョイスなの。 私は彼をLINEから削除した。 今思うと、彼と私の味覚がずれているのではなくて、単に彼が味覚オンチだったのかもしれない。 今となっては良い思い出…な訳もなく、私はあの暗黒物質の数々を今でも忘れる事が出来ない。 (※エネゴリ君に罪はありません。)
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