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先生達がアタシ達の演奏にストップをかけた後、アタシと夏子と春男くんは職員室に連れて行かれてこってりと絞られた。ハーモニカは没収されそうになったけど、父の形見なんですと涙ながらに訴えてなんとか無事に済んだ。春男くんは中学生と判ると、よく覚えておくからと、言われて青くなっていた。夏子は離れた席に座っていた天崎先生を終始眺めていて、お説経も聞いていなかった。疲れ切って職員室を出ると、御厨先輩と吉野先輩が廊下で待っていた。
「お疲れ様。大丈夫?」
御厨先輩がアタシ達を気遣ってくれる。疲れた心に沁みるなあ…。嬉しいな。ああ、バイクに乗ってスッキリしたいなあ。疲れていたからか、気持ちが素直にコトバに出た。
「先輩方、バイクでどこか連れてって下さい。」
先輩達は顔を見合わせるとクスリと笑った。吉野先輩がアタシの肩にポンと手をおいた。
「いいよ。お願いされるとなんだか嬉しいな。どこに行きたい?」
んー?どこだろ?どこでもいいけど、ライディングを楽しみたいな。
「…えっと、くねくね道?」
吉野先輩は一瞬ちょっとショックを受けたように口を開けるとガクリと頭を垂れた。そして後ろにいた御厨先輩にタッチした。
「…まったく、ココにもいたよ。峠バカ。…ミクリンの専門ね。ハイ交代。」
御厨先輩がしょうがないなというように吉野先輩と交代した。アタシはなんかちょっとテレるなあ。
「…晴海さん、NSR250だっけ?峠を攻めるのが好きなんだ?」
あれ?なんでアタシのバイク知ってるんだっけ?…ああ…そうか。アタシの脳裏に、道の駅で御厨先輩を投げ飛ばした後、逃げ去った情景が再生された。見られてたか…。ハハハ…。
「…箱根は行った?」
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