#2 ファースト・コーナー

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 アタシは晴海ちえり。機械科一年の工業女子高生です。バイクに乗るのが好きでこの高校の自動車部二輪班、通称二輪男子部に入りました。しばらく頑張ってみたけれど、毎日整備ばっかりだったのでやめてしまいました。ジムカーナは面白かったけどね。そう、アタシはバイクに乗って走りたかったんです。代わりに自動二輪研究会、通称二輪女子会に入りました。毎日整備三昧の男子部に比べてバイトする時間はあるし、乗る事の楽しみを研究する会だから、こっちにしました。女子会とはいえ、イケメン男子の部長さんと顧問もいるしね。アタシって軟弱かなあ?まあ、これから頑張ればいいよね。  そういえば、部員不足に喘いでいた二輪女子会の存続ですが、今年も延命が決まりました。元々の会員のミクリン(御厨悟部長機械科3年)、ミカリン(吉野美佳副部長電気科2年)に加えて、アタシ(晴海ちえり機械科1年)、夏子(佐藤夏子化学科1年)が入会。それに幽霊部員としてアタシのクラスメートの鈴木さん(メークが上手!)、同じく関山くん(クラス委員)が名前を貸してくれました。文化祭後に急いで名簿を作成して、ミクリンとミカリンがダッシュで生徒会室にねじ込んでギリギリセーフ!無事に来年の文化祭も展示会ができそうです。よかった、よかった。 「よかった、よかった。」  そんな感じでアタシは放課後の教室で、イケメンのミクリン先輩と机を挟んで向かい合って座っている。開け放った窓からは野球部の打撃練習の金属バットの音、テニス部のラケットがボールを弾く音、陸上部がハードルを跳ぶ音が聞こえる。そして柔らかい春の風が舞い上がって、校庭の乾いた土の匂いを運んで来る。     
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