#2 ファースト・コーナー

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 ふと目を上げると、ミクリン先輩の顔が至近距離でロックオンできた。風に揺れる長めの前髪を先輩がかきあげると、窓から入る少し傾き加減の陽光が栗色の髪にきらめく。同じ色の長いまつげにも光がこぼれる。ああ眼福じゃ…。 「なに?」  アタシの視線に気づいたミクリン先輩がニコヤカに話しかけてくれる。アタシは少し頬を染めて視線を外した。 「…いえ、なんでも…ないです。」  でも次の瞬間。アタシは現実世界に引き戻されるのだった。 「できた?」  アタシの幸せな時間はここまで。手元に目を落とすと、まだ開いた折り目も新しい『機械工作』の教科書が、紙の復元力でパタリと閉じた。その下に広げたノートもほとんどページが進んでいない。 「え?…え~っと。」  パラパラと、閉じてしまった教科書のページをめくる。しまった、しまった!どこだっけ?さっきわかんなかった所。パラパラとめくっていくと…アレ?行き過ぎた。ペラペラと戻っていくと、あった! 「…あの!ここ!ココが良くわかんないんですけど…。」  どれどれ?と、ミクリン先輩が身を乗り出してくる。あー、ここはね…と、教えてくれるんですけど…。す、すみません。すみません!そういうつもりで質問したワケじゃないですから!近い!近いですよ!男子に至近距離まで接近を許したことがないので!…しかもイケメンさんに!…ダメ…。ダメですよ! 「…と、いう訳だけど…話聞いてる?」     
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