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父さんが積み下ろし用のラダーを使って、バイクを運び出す。真っ赤なカウルのミニバイクでNSR50っていう。赤いのは父さんの趣味で、赤くするとノーマルより3倍速くなるらしい。ミニバイクって言うけど小学5年生のアタシには丁度いい。身長は高学年になってからグングン伸びて、クラスの女子では背の高い方から三番目。でも体重は身長には付いて行けず、ひょろっとしている。体重何キロとかは女の子が自分から暴露するもんじゃないけど軽い方。ひょろっとして肌が地黒だから、姉さんはアタシをゴボウみたいだって言う。多分、身長で抜かされて面白くないんだと思う。でも、姉さんが書いてくれたさくらんぼのマークはアタシのお気に入りのシンボルマーク。パソコンでプリントしてくれたステッカーはヘルメットとカウルに貼ってある。可愛いんだよ?
父さんが下ろしたバイクをスタンドに固定すると、アタシは点検を始めた。NSR50はサーキット用になっている。カウルも付け替えたらしい。いつもの父さんの真似をして、ハンドル廻り、ブレーキ、足回りを点検した。
「父さん。空気圧、少し落ちてるよ。」
「そうか?」
父さんがアタシが測ったエアゲージを覗きこんだ。空を見上げ、温度計を確認する。空は晴れ渡り、暑くなりそう。
「今日は暑くなりそうだから、これくらいで様子を見ようか。」
今日の予想気温は30度!なのでアタシは黄色いタンクトップとオリーブ色の短パンに白いキャップとビーサンという軽装だ。どうせツナギを着たら汗ダラダラになっちゃうけどね。父さんはオイル染みでまだらになった白い綿の作業着を着てる。多分、途中で暑くなってTシャツになると思うよ。
父さんが計測器をガムテープで取り付け、その他の点検とメンテナンスを済ませてガソリンを入れた。
「じゃあ、ちえり!ヨロシク!」
「はーい!」
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