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「ターリア、君には……これから僕のすることを見ていて欲しくはない」
「……ハーメルン?」
僕の言葉を聞いて、留まってくれて、何よりも嬉しかった。こんなに静かになった世界で、一人で生き続けるのはとても淋しいことだから。
メニュー画面を開き、自身の状態を確認するステータス画面を開く。装備品、所持金、所持アイテム、戦闘職の変更もここで出来る。
「これからの僕の行いを許してほしい。そして、信じて欲しい。君をこのゲームから救うには、他のプレイヤーたち全員を救うには、これしか方法は残っていない」
自身の“ハーメルン”としての象徴であった笛を外した。
――そして、吟遊詩人の職まで手放した。
「必ず君を助けてみせる。涙を流さなくても済むような、そんな未来を約束する」
僕は笛ではなく、剣をとった。とらなければならなかった。
最愛の存在とも言えるターリアに、その切っ先を向けるために。
「やめてよ……ハーメルン……。いったい何を――」
最高の剣士であり、最高のパートナーだったターリア。
それでも、剣士の職へと戻ったボクより弱い。
「どうして……!」
「忘れないで欲しい、必ず君を助けるから。……約束する。無事みんなが戻ったら――この先、未来永劫、絶対に泣かせないことを約束する」
戸惑ってはいても、剣は抜かない。この状況で、こうやって刃を向けていても、敵意を見せることはない。……信じられていることが、とても嬉しい。
「……ありがとう。そして、ごめん。ゆっくりと眠っていて欲しい、いばら姫――いや、僕の眠り姫」
そう言って僕は――最愛の彼女を手にかけた。
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