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「へぇ、それじゃあ野良で探してみようかな……。ありがとう、ハーメルン! 暇だったら一緒に行く?」
ハーメルン、それがこの世界での自分の名前。もともと童話が好きなこともあり、グリム童話がモチーフになっている没入型VRMMO『Iron Heinrich(アイロン・ハインリッヒ)』のプレイヤーの一人の名だった。
「ほら、僕は笛を吹くしか能がないからさ。戦闘職なら直ぐに集まるだろうし、同レベル帯で組んでいったらどうかな」
自分の童話の知識がそのまま有効活用できるこのゲームの中で、自分は吟遊詩人として活動しているのだけれど――こうして、他のプレイヤーから尋ねられることがままあった。
「最後のクエストに出てくるラスボスだけど……誰もクリアしてないって本当?」
「『誰も倒せない』って言われてるし、実際そうなっているのは確かだね……。でも――本当は“ある条件”を満たしたら倒せるって噂もあるんだ」
「……それってどんなの」
ゴニョゴニョと耳元に口元を寄せて、ひそひそで教えてあげる。
「……カエル!? なんでカエルになるのさ」
「このゲームの名前を知っているかい。鉄のハインリヒ――つまり、グリム童話の最初の物語である、『カエルの王様』さ。KHM1のクエストだけ用意されてないってことはそういうことだろう?」
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