1人が本棚に入れています
本棚に追加
最後のクエスト『KHM???』について尋ねてきた少年は、信じられないという表情をしていたけど――暫くしてうんうんと頷くと、意気揚々と腕を回していた。
「へぇ……今度いろいろ試してみようかな」
「まずは他のクエストを終わらせ――」
「まぁた、つまらない嘘ばかり吐いてるぜコイツ」
少年と自分の会話に無理矢理割って入ってきたのは狼――二足歩行をした狼のアバターをしているプレイヤーだった。鋭い目つきをこちらに向けたまま、ずんずんと此方へと近づいてくる。
「笛吹きがホラ吹いてどうすんだよ。あぁ?」
「でも、他の童話たちはこのゲームに関わっているだろう?」
「そんな事、俺が知るかよ。適当なこと言いやがって。そんな簡単なことだったら、誰かがクリアしててもおかしくないだろうが!」
大方、このプレイヤーも挑戦してきた帰りなのだろう。歯が立たなくて、それでも腹は立って。こうして自分に八つ当たりと、欠片もモラルが備わっていないように思える。
「つまらねぇガセ流してんじゃねえぞ」
胸ぐらを一気に掴み上げられる。――が、痛みも、苦しささえもこの世界には存在しない。死ぬ時は死ぬが、次の瞬間には近くの神殿でリスポーンされる。そんな仕様だからか、このゲームでは他のプレイヤーを傷つけ、あまつさえ殺せるPKシステムが採用されていた。
最初のコメントを投稿しよう!