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それともう一つ。自分がこのゲームを長らく続けている理由がある。『グリム童話』と、『共通認識システム』と、あとひとつ。
「あら、おかえりなさい。ハーメルン」
――床にまで届きそうな黒く長い髪。スラリと伸びた手足。僕よりも少しだけ身長の高い彼女が僕の名前を呼ぶ。
同じプレイヤーの一人であり、僕の最愛の彼女であるターリアだ。吟遊詩人である自分とは対照的で、戦士職でプレイしていた。実力はゲームの中でも上から数えた方が早い、もしかしたら上位二十人には入るのではないだろうか。
ターリア、『太陽と月とターリア』。いばら姫。
何人たりとも花へと触れさせぬ鋼鉄の茨とは、彼女の剣のことである。
「今日も最後のクエストに?」
「四人で挑戦したけどダメね、ぜーんぜんゲージが減らないの。絶対、一番最初に攻略して見せるんだから!」
……今から一年前、吟遊詩人としてフラフラしている自分に、ゲームを始めたばかりの彼女は話しかけてきた。どこからか、初心者にいろいろ教えてくれるプレイヤーがいる、とでも聞いたのかもしれない。
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