2.共通認識

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「なんてゲームだ……」  こっちはそんなつもりじゃなかったのに。この世界に浸れるだけで、十分に楽しかったのに。と、メールを送ったところで答えは返ってこないだろう。……まさか、運営によってそれを奪われてしまうなんて。 「みんなに知らせないと……。……ハーメルン?」  期限以内に誰もクリアできなければ全滅。ゲーム内で死んでしまっても、期限切れと共に現実で死亡。誰も彼もが疑心暗鬼になり、最悪殺し合いが始まってしまうかもしれない。 「これが広まったら……みんなパニックになる」 「なに言ってるのよ! もう犠牲者(、、、)が出てるのよ!?」  減っていた4人。もしや、クエストに挑戦した者たちなのだろうか。アナウンスにあった言葉を信じ、クリアを目指し、それで――   「――ターリア! どこに行くんだ!?」 「どこって、皆に教えてくるわ! それに、クエストをクリアすれば皆助かるんでしょう!? それなら行かないと……!」  彼女はクリアすれば全部解決だと言った。だが、それはできない。今の状態で、ラスボスに勝てる保証なんてどこにもない。そして、それに失敗してしまえば……僕はもう、ターリアに会うことができなくなってしまう。 「絶対にダメだ! それだけは……ターリア、君が犠牲になるのだけはダメだ! 誰か――他の誰かが終わらせてくれるのを待とう!」 「……なんで? なんでよ! きっとできるわ、私が戦って、貴方がそれをサポートして――」  弱気なことを言っているのは自分でも分かっている。  けれど、自分にだって守りたいものがあった。最低限の日常があった。 「“きっと”が通る状況じゃない、それは無理だ。……できない。誰も今まで攻略できなかったんだ。僕が入ったところで何ができる? 頼む、お願いだよ、ターリア」 「――っ」  制止する自分の腕を振りほどき、ターリアは外へと飛び出してしまった。 「……意気地なし……!」と、そう言い残して。
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