第五章 朱火定奇譚 肴

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 どうしょうもなく惹かれてしまい、ある日、終に蔵で結ばれる。それを、銀行員の女性に見られてしまい、恐喝されていた。 「殺してしまったのか……事故なのか……」  話があると、電気も付けてない蔵に呼出し、結果として落ちてしまった。  この銀行員の女性は、金銭が目的ではなく、この杜氏と結婚しようとしていた。 「何となく、話は分かったよ……」  若い杜氏が、きりりとした美形で、清廉潔白みたいだったのが悪い。皆、手に入れようと足掻いていた。妻は子供で繋ぎ止め、親友は悲しみから救おうとして、抱いてしまった。杜氏が無理矢理抱かれていると思い込んだ、銀行員の女性は、話を付けようとした。女性に恐喝されているのだと、親友は女性を事故死させた。 「……誰が、一番好きだったのだろう」 「流されるままの人生でした……でも、成長してゆく息子を見るのは嬉しかった……」  返事が聞こえて、俺は驚いてしまった。それは、今の映像で、息子への回答であった。若い杜氏は親になって、息子の幸せだけを願っていた。  その息子は、彼女を連れてきていて、近々結婚するらしい。  若い二人が家を出てゆくと、二人の男が残った。 「……又、二人になってしまいましたね……」 「やっと、二人きりになった、でしょう?……」  全ての役目を終えて、恋人同士にやっとなれたという。抱き合うと、深く結ばれていた。 「ハッピーエンドなのかな?」  テレビのように他人の人生を見てしまうのも、悪いとは思うが、つい目を離せなくなってしまう。 「守人さん、新しい家を見てください」  外で志摩が呼んでいるので、旅館の外に出てみると、見た事もない家が保管されていた。 「これ、誰の家なの?」 「遊園地にあったのですよ!」  これは、幽霊屋敷と呼ばれるものではないだろうか。 「志摩、これは住めないでしょ?」 「夏のイベントに使用できます!」  志摩も幽霊屋敷と分かっているらしい。他に観覧車もあって、暗闇に浮かんでいた。 「この観覧車もイベント用?」 「これは、壱樹村に移設しようとしています。村には、何もないではないですか?」  何も無い所に、観覧車を置いて意味があるのであろうか。むしろ、山の上に置くと、雲の上が見えそうでいいかもしれない。  志摩の中でゆっくりしようとしていたのだが、外で遠吠えが聞こえていた。モモコが誰もいないので、寂しがっているのだろうか。
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