第一章 朱火定奇譚 飯

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 氷渡に言われるとまだ頷けるが、八重樫に言われるとムカついてしまう。八重樫が、同居している小田桐にサービスしている所など、見た事もない。 「志摩、貸し切り温泉に行く?」 「……家の風呂でいいですよ。守人さんが、毎日泥風呂を作ってくれているでしょ。もったいない」  俺と旅行するのも、もったいないのか。再びショックを受けていると、通路から大笑いしながら谷津がやってきた。 「谷津、盗聴とか、盗撮は止めろって……」 「面白かった!」  普段は俺が志摩を振り回しているので、逆転しているのが、面白かったらしい。 「氷渡、明日、喫茶店ひまわりの店員をお願い。志摩と、米探しの旅に出る!」 「え、俺?」  今は深夜であるのに、氷渡がビールを飲んでいるということは、明日は休みなのだ。 「八重樫もね!」 「え、俺も?」  たまには、食べているだけではなく、サービスする側になった方がいい。
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