第二章 朱火定奇譚 飯 二

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 翌日の土曜日、俺は早朝から起きると、身支度を始めた。 「志摩。行きたい場所は決まったのでしょ?」 「はい。守人さん」  志摩が地図を出してきたので、見てみると日本地図に大量の丸がついていた。これだけの箇所を巡っていたら、一年かかっても回り切れない。 「志摩……」 「赤丸が、今日行ってみたい場所です」  赤丸を確認してみると、ぐっと少なくなっていた。数えてみると、五カ所くらいで、そう遠くはない。 「分かった。出発しよう」  黒川が眠っているので、そっと家を抜け出すと、朱火駅の裏へと向かってみた。  朱火駅の裏側には、皆で借りている駐車場があり、そこに俺の車も置いてあるのだ。新人の肩書が取れ、かつ研究員になってしまったので、車通勤が許されていた。車には志摩の箪笥も積み込んでいるので、志摩と会話しながらドライブができる。  車に荷物を置くと、ナビをセットしておく。車が走りだすと、志摩の手が助手席に来ていた。 「守人さんと二人きりなど、久し振りですね」  黒川が同居しているので、ほとんど二人きりということはない。 「そうだね……」  高速道路に乗ると、一気に田舎に向かって車を走らせる。見た目は一人旅なのだが、志摩が助手席にいるので、寂しくはない。しかも、二人きりではなく、大慈も助手席に座っていた。胎児のミイラである大慈は、俺のポケットに入って一緒に来てしまったらしい。
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