40人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日の土曜日、俺は早朝から起きると、身支度を始めた。
「志摩。行きたい場所は決まったのでしょ?」
「はい。守人さん」
志摩が地図を出してきたので、見てみると日本地図に大量の丸がついていた。これだけの箇所を巡っていたら、一年かかっても回り切れない。
「志摩……」
「赤丸が、今日行ってみたい場所です」
赤丸を確認してみると、ぐっと少なくなっていた。数えてみると、五カ所くらいで、そう遠くはない。
「分かった。出発しよう」
黒川が眠っているので、そっと家を抜け出すと、朱火駅の裏へと向かってみた。
朱火駅の裏側には、皆で借りている駐車場があり、そこに俺の車も置いてあるのだ。新人の肩書が取れ、かつ研究員になってしまったので、車通勤が許されていた。車には志摩の箪笥も積み込んでいるので、志摩と会話しながらドライブができる。
車に荷物を置くと、ナビをセットしておく。車が走りだすと、志摩の手が助手席に来ていた。
「守人さんと二人きりなど、久し振りですね」
黒川が同居しているので、ほとんど二人きりということはない。
「そうだね……」
高速道路に乗ると、一気に田舎に向かって車を走らせる。見た目は一人旅なのだが、志摩が助手席にいるので、寂しくはない。しかも、二人きりではなく、大慈も助手席に座っていた。胎児のミイラである大慈は、俺のポケットに入って一緒に来てしまったらしい。
最初のコメントを投稿しよう!