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「水のおいしい場所が米の産地かというと、そうでもないような気がします」
米どころの水は美味しいが、水が美味しいからといって、良い米が育つとは限らない。又、同じ産地でも、生産者によって味は大きく異なる。
志摩の丸印には、道の駅や、地元の物産店や直売所を含んでいて、生産者の分かる米が購入したいらしい。
「……米と水がセットで欲しいのですが、なかなか、そういうセットは売っていないのですよ」
米を購入した場所の、水を入手しながら移動するのか、湧水の在処にもチェックがされていた。
「ついでに、地元の味噌なども購入しておけば?」
「守人さん!」
怒られるのかと思ったら、志摩がガッツポーズをしていた。
「いい案です。味噌と塩も買っておきましょう!」
車は田舎に向かって走っていて、周囲の景色には建物が減ってきた。俺は、田舎の出身なので、田舎の景色を見ると、妙に落ち着く。
家の横に食糧庫が出来て、自家製味噌を作り出したが、どうも志摩は味に満足していない。ぬか床なども多数あるが、様々な組み合わせで糠の菌を育成していた。
中には猫一匹くらいならば、菌に喰われて消えてしまうのではないかという、強いぬか床もあり、何に使用するのか聞くのが怖い。
「俊樹さんは、正式に料理を学んでいますが、私は独学ですからね……知識に差を感じます」
俊樹はレストランなどでも修業しているので、レパートリーも広い。志摩も人間の体を持っていれば、あちこちに行けるのだが、箪笥から出せるのは、手だけなのだ。
「……志摩の料理はおいしいよ」
「私は、守人さんの料理も美味しいと思います!」
ナビがアナウンスを始めたので、高速道路を降りると、最初の道の駅に行ってみた。ここは、レストランも有名で、この土地の素朴な料理が楽しめる。
レストランに入ろうとしたが、志摩は手だけのため出て来られないので、俺一人になる。一人でレストランに入ると、やや目立ってしまっていた。
「君、学生かな?」
定食の食券を購入すると、他におにぎりセットとカレーを注文しておく。
「いいえ、社会人です。これが社員証です」
何度も社員証を確認されているので、納得できないのかもしれない。
「どこに行くの?一人なの?」
こういう場合の言い訳は、既に決めてあった。
「親に頼まれて、祖母の家に様子見に行く所です」
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