第二章 朱火定奇譚 飯 二

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「……それでは、幸せの青い鳥ですね。こうして、探してみると青い鳥は家にいたみたいなものですか……」  志摩の声が小さくなっていたが、それは旅をしたということが重要なのだ。 「志摩……比べてみないと、良さというのが分からない場合も多いよ。こうして、外の地を見て食べて、壱樹村の良さも分かる」  壱樹村には闇があり、今も野菜を使用しているが、多少は中毒性がある。意味もなく、再び食べたくなってしまう代物だ。志摩はそれを気にしていて、こちらの世界の野菜に拘ろうとしたのかもしれないが、多少の中毒性ならばタバコの方が強いくらいなので、問題はない。 「では!次に行きます!」  志摩が元気になっていた。  次の場所というのは、山を登って行った先になる。車を走らせていると、ラブホが見えてしまった。横を見ると、大慈が眠っているので、チャンスのような気がする。志摩の手を突いて合図すると、志摩は溜息をついていた。 「守人さん、私は箪笥の中でしか出来ないので、どこででも一緒でしょう?それに、この車は、見た目は守人さん一人なので、不自然でしょう」  確かに、言われてみれば俺がバカだったと分かる。でも、志摩と入ってみたかったのだ。     
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