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「……そうだね」
がっかりしていると、志摩が肩を叩いて慰めてくれた。
「気持ちだけで、嬉しいです」
寄り道もせずに、ラジオのニュースなどを聞きながら山道を走っていると、どこか既視感があった。この地は、どこかで見た記憶がある。
「大慈、この景色はどこで見ている?」
考えていると、どんどん記憶が遠のいてゆく。大慈も目を覚ましたが、景色を見て倒れていた。
「大慈、大丈夫?」
車を路肩に停車して、大慈を手に乗せてみた。
「平気です、思い出そうとしたら激しい眩暈がしました」
「俺も、同じ……」
この眩暈は何であろうか。再び周囲を見てみると、どこにでもあるような、田舎の道が続いていた。やや登ったが、山などではなく、細い道の両側には、家が建ち、田もあった。小さな川が流れていて、石の橋なども架けられていた。
青々とした草が川の付近にあり、花なども咲いている。壱樹村にもあるような、普通の景色であった。
でも、この景色に見覚えがあり、思い出そうとすると目が回ってくるのだ。
ナビで現在地を確認すると、空き地に車を止めてみた。
「……風が吹いていない。空気が止まっているみたいだ……」
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