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まるで写真の中の世界に入ってしまったかのような、錯覚を感じる。川まで降りて、水に触れてみると、水も止まっていた。
「……変な所に入り込んだな……」
携帯電話を見ると圏外になっているので、この地は、どこかが迷っている。しかし、車に戻ってみると、数人が畑の横で喋っているのを見つけた。俺が、声を掛けようかと歩き出すと、見えているのに全くたどり着けない。
「どうなっている?」
この世界は、俺の存在を許さないということなのか。俺が立ち止まると、喋っていた人がこちらを向いた。
「どうしたの?迷子かい?」
俺の姿は見えているらしい。
「はい。道の駅に行こうとしています」
「歩いて行くのかい?少し遠いよ」
俺が車を指差そうとしたら、車を見失ってしまっていた。そんなに離れたわけでもないのに、車が見つけられない。
「車で移動します」
俺が頭を下げると、三人が話し合い、懸命に道を教えてくれていた。
しかし、教えるも何も、ここは両側に森があって、道が一本しかない。聞いた俺を不審がらずに、丁寧に教えてくれたが、少し悪い気がしてしまう。
「坊や、少しこっちに来て、食べて行きなよ」
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