第二章 朱火定奇譚 飯 二

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 強い風が吹いていて、焦げた匂いに目が覚めると、周囲一帯が燃えていた。道は細く、車で逃げようとしたが、火で塞がれていた。車から降りると、川へと走る。  周囲が燃えているので、どこから消したらいいのか分からない。風が飛ばしてくる熱風で、呼吸が出来なくなる。消防の音が聞こえているので、もう少し頑張れば助かる。しかし、川が風下だったのだ、熱風に人が次々と倒れて行った。 「こんな筈ではなかった……明日、息子が来る、明日食べる饅頭を用意している。それなのに……」  状況を確認して、再び車から外を見ると、そこには何も無かった。道だけが残っているが、家は更地になっていて、木々も無くなっていた。  皆、更地になっていて、人の気配は全くない。 「ニュースの映像だよ……」  館野も、両親や姉の葬儀をした記憶が、きっと残っている筈だ。多分、先程の俺のように、思い出せなくなっているだけだ。  館野もこの止まった場所に入り、実家に帰ってしまったのだろう。もしかしたら、墓参りに来て、ここに巻き込まれたのかもしれない。 「……もしかして、ここの住人が遠藤商店を知らないと言ったのは、遠藤商店が無事だということか……」
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