第二章 朱火定奇譚 飯 二

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 俺は、残っている細い道を走ってみた。すると、更地を抜け、家が多くなってきた頃に遠藤商店という店を見つけた。  車を止めて遠藤商店に入ってみると、人の気配が無かった。 「すいません。どなたかいらっしゃいますか?」  店内には菓子などもあるが、箱詰めになっている野菜などもあった。その野菜は、送り状などが用意されていて、これから個人宅に配送になるらしい。 「はい。どなた?」  若い男性が、エプロン姿で出てきていた。 「あの、遠藤 貴一さんですか?」 「そうだけど、誰?」  不審そうに見られてしまったので、俺は鞄に入れっぱなしになっていた、名刺入れを出した。 「何かの、売り込み?」  追い出されそうな気配になったので、俺は慌てて首を振った。 「館野 幸多さんを知っていますよね?」  館野の名前を出すと、遠藤がまじまじと見ていた。 「館野の知り合い?」 「知り合いという程でも無いのですが……」  どこから説明したら良いのか分からずに、俺は暫し固まってしまった。しかし、時計を見ると十二時で、ここには館野の名刺がある。名刺を見ると、携帯電話の番号もあった。  俺は館野に電話を掛けてみた。 「あの、喫茶店ひまわりの上月です。たまたま、仕入で館野さんの故郷に寄ったのですが、遠藤商店は位置が変わりましたが、ありますよ」 「……え?そうなの?そこの電話番号は分かる?」  電話番号が分からなかったので、遠藤に電話を代った。 「本当に館野なの?全然、連絡が取れなくなってさ……あれから、七年?」  互いに電話番号を教え合うと、一旦、電話を切っていた。 「不思議だよね……そんなに遠いわけでもなかったのに、連絡方法が無くなっていた……」  遠藤は店先だが茶を入れてくれて、経緯を教えてくれた。 「火事だったよ。深夜の二時だったかな……俺の家族と俺は、その日は葬式でこの地を離れていた」  帰って来たら、家が燃えて無くなっていただけではなく、周囲も皆、消えてしまっていた。 「俺は、家に携帯電話を忘れてしまっていてね。皆の連絡先も消えてしまった……」  それでも、地元には残り、両親と店を再建したらしい。 「通販でさ、野菜とか漬物とか、あれこれ地元の品を売っている……」  館野の事を探したが、どうしても連絡が付かなかったらしい。
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