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「志摩、モモコが呼んでいるから、外に出てみるよ」
「そうですね、かなり泣いていますね」
志摩の箪笥から外に出てみると、囲炉裏の前でモモコが一升瓶を抱えていた。
「モモコ?」
「ワオン、ワンワン」
酒の魚を持って来いと、モモコが吠えていた。志摩が、ドッグウードを出すと、モモコがニコリと笑った。
「モモコ!そのお酒は、秘蔵酒でしょ?それを飲んでおいて、魚ですか?」
モモコの笑顔に怯まない志摩も怖い。
「キャイン?」
モモコが持っている一升瓶は、今日、購入したものだろう。山間酒造のどぶろくであった。
「ワンワンワン、ワワン」
酒は悪かったが、ドッグフードは嫌だとモモコが駄々をこねていた。モモコがドッグフードを食べている姿を、俺は見た事が無かった。
モモコと志摩が睨み合っているが、どちらも譲りそうにない。俺は、モモコから酒を奪うと、焼き魚を出してやった。
「ワンワン、ワワン」
「守人さん!そうやって、守人さんが甘やかすので、モモコが我儘になるのです!」
俺まで、志摩に怒られてしまった。
「モモコ、酒は美味しかったか?」
「ワン!」
どぶろくは、美味しいらしい。俺は一升瓶をもう一本持ってくると、自分に注ぎ、モモコの皿にも注いでやった。酒を口に含むと、辛口であるが、どこかさっぱりとしていて、魚に合う。
「守人さん!湯呑で酒を飲むのは、のんべえみたいなので、止めて下さい!」
一回に飲む量が、湯呑で丁度いいのだ。
「志摩、では、コップでいいかな?」
冷酒なので、コップ酒というのもいい。
「……守人さん、スルメと、エイヒレです。それとマヨネーズ」
何だかんだ言っても、志摩も甘いのだ。
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