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今日のりんは、すごく焦っていた。
早く帰って相撲が見たい!
今日の結びの一番の、その前の取組で豪栄力対高司という大関対決がある。
二人とも星の差一つで、横綱 白凰を追っている。
優勝争いがかかる大事な取組だ。
慌てて帰らなくても、充分に間に合う。その事はわかっているのに、気持ちが急いてしまう。
いつも一緒に帰る友達には、「今日は急いで帰るから!」と断ってあった。
理由をちゃんとわかっている友人たちには、「焦って転ばないで!」と心配されてしまった。
……そう、小さい頃からりんはよく転んだ。
通学路にある溝にも、落ちた事がある。一度目は心配されたが、二度目は苦笑された。
こういう時、真っ先に手を差しのべてくれるのも叶多だった。
「バイバイ!またね~!」
教室にいた友達に声をかけ、教室を飛び出そうとした時、入ろうとした人と肩がぶつかった。
「イッテ~!」
「ごめんっ!」
ぶつかった相手と目があった時、りんは思わず眉根を寄せた。
相手のコウタも、口をへの字に曲げた。
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