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「りんちゃん、おはよう!」
すっかりと自分の世界に入り込んでいたりん。斜め上から聞こえてきた涼やかな声に、なんの心構えもなしに目を向けた。
「っ!……はよっ」
キラキラオーラを纏った叶多の王子様スマイルに、ポッと頬を赤く染めたりんは、慌てて目を逸らした。
叶多にやっと届くくらいの挨拶を返したりんは、子どもたちの列の最後尾に着いた。
だからりんは、いつも気付かない。そんなりんの様子に、叶多の王子様スマイルが曇ってしまう事を。
「りん!ちゃんと挨拶しなさい!おはよう!叶多くん」
「おはようございます」
お母さん、ピンクのハートが飛んでるよ……
りんに対する声色と、叶多に対する声色の一瞬の変化。呆れを通り越して、りんは感心した。
「みんな~、いってらっしゃい!気を付けてね~!」
母の能天気な声に送られて、りんたちは小学校へと歩き始めた。
りんと叶多は同じ子ども会で、登校班も一緒だ。今年度、りんたちの登校班には六年生がいなかったため、登校班長が叶多で副班長がりんだ。
九名の登校班で、小学校へ約三十分かけて通学する。
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