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当時大学4年であった男は、何度が参加した学会で響を探したものの見つけることが出来ず、海外の大学院に進学し、つい最近までその大学で教鞭をとっていた。 そして今年の春、母校であるこの大学で教鞭をとってくれないかという申し出があり8年振りに日本での研究を始めることになっている。 今日はゼミのミーティングがあり、そこで紹介を受けると男の大学時代の恩師に言われあの研究室で人を待っていた。 開始時刻の30分も早く研究室に着いてしまい、暇を持て余していた。 そこに現れたのが響だった。 ノックがあり、部屋の扉か空いた瞬間甘い香りが漂った。 そしてそこに居たのはあの日から男が探し求めていた少年だった。 10年ほど前一瞬だけ見た少年だったが、男には今目の前に立っているのがあの時の少年だと一目見てわかった。 男の方を見つめた青年の目が見開かれたことから男には響も気づいているのだということが容易に想像出来た。 そして次の瞬間、部屋中に狂いそうなほど甘い香りが漂った。
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