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「自分だけが正しいと思って、いい気になるなよ」
16歳のイルビスは、地面にへばりつくU.L.を見て反吐を吐いた。直径20mに広がるU.L.には隔離棒が突き刺さっており、隔離棒はU.L.を囲むように等間隔で並んでいる。
「お前たちがのさばるせいで、地球に住めない人々が出てきたんだ!」
イルビスはU.L.を強く踏んで見せた。踏みつけられたU.L.はそれに反応するかのようにイルビスの右脚にまとわりつき、イルビスはU.L.を振り払った。
「父さんの言ってた通りだよ……このU.L.は何もかもを飲みこんでしまう図々しいものなんだ!」 地殻変動やエゴ・インベイジョンでU.L.に取り込まれる都市や人々は現在でも数多く存在する、そのことをイルビスは自分の父親から聞いていた。
「相変わらずだな、この国は。でも……俺の知らないところでは苦しんでいる人々がいるんだな……こんなものがあるせいで」
イルビスの住むここゾーン中立国では、平和であることに恩恵を感じたが、同時に違和感もあった。
「この国は中立という名の下で地球での苦しみから目を背け、U.L.は暴れ放題! こんなことで世の中が平和になるものか!」
イルビスが歩み進めると、足元に雑誌が落ちているのが見えた。
「U.L.でこんな状況だって言うのに凝りもせずにくだらないことを広めているんだな、旧世界は」
その雑誌の表紙にはバイクに乗った2人の少年少女が夕暮れの空を飛んでいるのが写っており、寝かせた車輪にはきらびやかな緑色の膜が張っている。旧世界で流行している浮遊スポーツ、エアライドだ。
「U.L.と対話するためにこんな奇怪で危なっかしいスポーツをしなきゃいけないのかよ……誰がやるっていうんだ」
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