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祖母に促されるまま、イルビスはミユキの祖父の元へ向かった。木造の渡り廊下を抜け鉄の玄関扉を開けると、あたり一面には灰色の空間が広がっていた。天井や壁には鉄骨が敷かれており床には身の丈ほどもある絹の袋や高さ5mほどあるドラム缶が区画ごとに整理されながら複数置かれていた。中には等身大の榴弾が置かれている所まである。すっかり慣れた火薬のにおいがイルビスの嗅覚を刺激する。
「相変わらず匂うなぁ、ここ」
ミユキの家は福田火薬製造所という町工場を営んでおり、主に花火の製造を請け負っている。歩みを進めていると、ドラム缶の中の火薬を調合する祖父の姿をイルビスは確認した。
「じっちゃん、用があるって?」
ワイヤーで吊るされた台の上に登ってドラム缶の中身を棒でかき混ぜる祖父は、イルビスの姿を見下ろすなりしかめ面で相対する。
「もうじき地球軍の連中も身支度の頃だ。うちも忙しくなる」
イルビスは祖父の言動からあることを察しながら彼に尋ねる。
「それって、E.M.C.(地球軍)の派閥争いのためか?」
祖父は愚痴っぽく口を尖らせる。
「ああそうだ。新世界だの旧世界だのと住む所違うってだけなのに喧嘩を始めようとしている。おまけにギルドや火星の連中まで来るもんだ。そんなことで儲かっても喜べんよ。わしも断り続けたが向こうもしつこく来たんでね」
ドラム缶の中身を混ぜ終わった祖父は混ぜ棒を壁に寝かせ、梯子からゆっくりと降りていく。
「そこでお前に頼みがあってだな。しばらく団らんに構ってられなくなるから家の手伝いをしてくれよ。独りとはいえ、お前も居候の身だからな」
「耳が痛いな」
祖父の言葉に、イルビスは口元を歪ませながら釣り上げ白い歯を見せてみた。
「で、用事ってのはそれだけ?」
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