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オルタスの一つ、オルタス1のとある地域では広大な森林が広がっていた。大気には高濃度の青い粒子が漂っており、吹き付ける風は人肌ほどの暖かさを持っていた。青い粒子もまた機械の動力に使用されるものだったが、こちらはより電気量が大きかった。その中で森林浴を楽しんでいる趣味のサークルがあった。メンバーは皆20代で、男2名と女2名だ。そのうち男2名は10代の青少年がするようなあどけない服装をしていた。
「平和だねぇ……」
サークルの一人の男が和んでいた。
「そりゃあ、ここでは地球みたいにヤンキー主義にさらされる心配はないしな」
もう一人の男が答える。オルタスに人々が移り住んで約30年。オルタスでは独自の文明・文化が築かれようとしていた。
「ここでは煙草の煙で害されることもないし、ましてや若いうちから子作りや就労に急かされることもない」
地球と異なる澄んだ空気の中で2人の男は、オルタスでの平和を満喫する話題で盛り上がっていた。そんな中、一人の女が意地悪そうにしつつも、にこやかに話を切り出す。
「そんな風に暮らしていけるのも私たちヒューマノイドのおかげよね。ちゃんと感謝してよ?」
「分かっているさ。日頃から世話になっているよ」
ヒューマノイドとは、主にオルタスで生み出された人造人間で、全身が新種のナノマシンで構成されている。彼らの役目はオルタスの管理とオルタスに移り住む人々の生活支援、さらには労働や人々との間での生殖といったものがある。女ヒューマノイドがさらに意地悪を言った。
「ま、感謝の言葉だけでは済まされない所もあるようだけれど?」
男が口ごもる。
「う、それは……」
弱い立場の人々を守るために生み出されたヒューマノイドたちの大半は、自分たちの役割に疑問を持たなかったが、人々の間ではその役割をヒューマノイドたちに押し付けるのはオルタスの問題点として捉えており、中にはこれ以上自分たちのために使役させられるヒューマノイドを生み出させまいと反対する者さえいた。さらには一部のヒューマノイドもオルタスの各地でデモやテロを引き起こしており、それがオルタスの社会問題となっている。2人目の男が曇った表情を見せた。
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