プロローグ

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「お、俺たちはここで平和に暮らしたいだけだ! お前らが推し進めるように若いうちから子作りさせられたり、働かされたりすることのないようにな! お前らにここを荒らす権利はない!」  ヤンキーが答えた。 「権利だと? 俺達には力があるから権利もあるんだよ! 若いうちから女にはモテるし、おかげでガキがわんさかできやがる。土木工事も事務作業も、お前らより速くできるんだぜ? じゃあお前らはどうだ? 何の力もねぇじゃないか! 現にお前らは地球で子作りや仕事ができなかった挙句、ここでも同じことができなくてビクついてんじゃねぇか! え? ん?」  もう1人の男も抵抗した。 「権利なんて、ど、どんな人間にもあるじゃないか! 子作りや仕事だって若いうちからでなくてもいくらでもできる! 力のありなしで、ふ、踏みにじられなくちゃ、な、ならないのかよ!?」  ヤンキーは再び答える。 「俺らが踏みにじってるんじゃねぇ。テメェらが勝手に弱くなっているだけだ。いくらでもできる? ハッ、んなわけねぇだろ! 年をとるとなぁ、どんな能力も衰えていくんだよ! そんなんでいつまでもこもっていたら、俺達がいなくとも自分一人で生きていけないぞ?」  オルタスに移り住んだ人々は強者の強いるルールから外れることにより、次第に生きていく力―生殖能力や労働力が弱くなっている、ヤンキーはそう思っているようだった。男はさらに抵抗の意思を見せる。 「人は一人では生きていけない! だから助けあって生きていかなくちゃい、いけないんだ!」  ヒューマノイドがオルタスの人々の生活支援をするように、オルタスの人々も家事手伝いをしていたが、ヤンキーにしてみればそれらを助けと称するのは綺麗事や欺瞞のように思えるのだろう。『ヴィヤーサ type P330』が右手のサブマシンガンを下ろす。ヤンキーからの音声が聞こえた。 「そうか。だったらその助け合いとやらをしながら、俺たちに潰されて死ね!」 「なんでそうなるんだよ!」  頭上には『ヴィヤーサ type P330』の左足が迫っていた。サークルのメンバーたちはその場から逃げ出していく。そうしていく中で、突然4人の視界が真っ黒になった。
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