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プロローグ
地球軍事機構、E.M.C.(Earth Military Construction)の宇宙船の中で、一人の男が仏壇の前で鐘を鳴らしてつぶやいた。
「情けねぇ……」
遺影にはニット帽を被ったヤンキーの顔が映っており、その目は腑抜けた様子だった。船外の宇宙では爆発が次々と発生し、戦闘が起きているのが分かる。その爆発は船内の空気を伝って音となって鳴り響いていた。このヤンキーもその戦闘で敗れて命を落としたのだろう。
「我がヤンキー政治も、その実現には前途多難ということか……」
その男、ロニウス・クランは自らの野望実現に燃えていたが、艦前方には30隻にも及ぶ敵艦が群がっていた。その敵艦から無数の湾曲したレーザーが放たれ、ロニウスの艦『リヴァイアサン・テイル』周辺にあったフォーミュラ・アーマメント(以下F.A.)『フラット・タイガー』2体の腹部を貫いた。
「『フラット・タイガー』、ラムサス機、レイチェル機、ロスト!F3小隊全滅!」
残りの『フラット・タイガー』は鈍重な動きで回避に努めるが、他のF.A.とは相対的に旧式化の進んだ機体では急所を避けるので精一杯だった。次々と味方を撃破され、艦載F.A.も残り2体となったその時、齢19歳のロニウス少佐はある決断を下す。
「やむを得ない……全速でこの宙域を離脱、ならびに地球に進行する」
それに対して操舵士が返答する。
「しかし、そんなことをすればこちらは丸腰になり、F.A.の回収もできません!」
ロニウスの対応は冷淡そのものだった。
「構わん。艦体を急速に旋回、スラスターを最大出力にせよ」
操舵士の顔がこわばる。
「了解……」
『リバイアサン・テイル』が艦首を180度時計回りに旋回させた後、スラスターを吹かし離脱を始めた。取り残された2体の『フラット・タイガー』の搭乗オペレーターが慌てだす。
「少佐ァ、我々を見捨てる気ですか!?」
「この艦体をたった2機でどうやって抑えるんです!?」
2体は10数秒間抵抗した後、敵艦の艦砲に貫かれて爆散した。それに構うことのないかのごとく、『リバイアサン・テイル』は地球への進路を進めるであった。
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