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5.
「こうして自然の中にいるのも気持ちいいものね。」
「ああ。地面をみてごらん、レワ。ほら、木洩れ日の当たった所と木陰の所が斑になっているだろう。俺はこの何気無い模様が好きなんだ。」
「ロマンチストなのね。分かるわその気持ち。見てると心が穏やかになるものね。」
「茶化すなよ。ところで、この木の影になっている部分、レワは陰か陽かで言ったらどっちだと思う?」
「陰でしょ? だって影になっているんですもの。」
「じゃあもし此処に木が無くて日が当たっていたとしたら?」
「それなら陽に決まっているでしょ。」
「ではでは、もし太陽が無くて日が当たってなかったとしたら?」
「勿論陰だわ。」
「さらにさらに、漆黒の宇宙空間が無くて地球が直接神の世界の光に包まれていたら?」
「陽・で・しょ・!」
「ところがどっこい、神の世界さえも無くてそこに造物主を作りし深遠なる虚無のお方のせか%\$」
辛抱しきれずランシードの口を手で塞ぐレワ。
「陰陽陰陽陰陽、いつまでも繰返しが続くんでしょ!? そんなグノーシス主義者みたいな話してるとまたグランスーズさんにお出座し願うわよ。」
「すまん。ラスボス倒したら真のラスボスが出てきたみたいな話になってしまったな。..いや、俺の言いたいのはそこじゃないんだ。つまり、人間の性質が善か悪かというのはこれと同じだと思うんだ。自意識を自覚した時のその最初の状態が後の人生に影響を及ぼすかもしれないし、最初に見た両親の影響や、お腹にいた頃の母親の影響かも知れない。さらに遡って遺伝子レベルの影響か、はたまた人類の共通意志の影響か、加えて前世の自分や平行世界の自分の影きょ\#$%」
「また話が纏まらなくなってるわよ。」
「度々すまぬ。ゴホンッ。要するに人間存在に影響を与えているものの中で最も深層にあるものは何かということを見極める事無くして性善性悪を決定することはできないという事だ。」
「..思ったより良いところに目を付けるのね。もしかして月面政府文教省の受け売り?」
「いや、俺の知性の迸りだ。」
意味も無く哲学者ぶるランシードであった。
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