0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
2.
「レワ、この建物何か知ってる?」
秘密警察の格好で何やらふざけているレワを呼び寄せて聞いてみる。
「知らない。何?」
そうだろうと予測していたのですぐに言葉を継ぐ。
「これは赤城神社といって岩井山に昔からある神様を祭る場所だ。」
「神様? いるの、本当に?」
レワも神という概念を知っているようだ。その様な事まで学習していたとは意外だ。しかし疑問も持っているようだ。当然だ、トラピスト文明では神の存在を地球文明固有の産物だと教えていたのだから。
「存在しているのかいないのかは俺にも分からない。ただ重要なのは過去の人類がそういう認識を持ったという事実だ。神の概念は各々の民族によって異なっている。神といってもその存在を産み出した民族によってその付与されている権能に差があるんだ。」
「ふーん。超人間的存在なのに存在形式は人間次第なのね。」
「そう言ってしまえば身も蓋もないな。まあ、そうだな。レワ、君は自分が俺の中の概念から産み出された存在だってことは認識してる?」
「ええ、ちょっと複雑な気分だけどね。トラピスト1xで生きていた頃の記憶もあるし。」
「つまり人類と神との関係は俺と君との関係と同じだということだ。俺が君を清らかな存在だと概念規定したから君は今清らかな存在として生成されているわけだし、もし俺が君をもっとビッチな存在だと概念規定していたら君は今俺とこんなに冷静に話をしていられなかったはずだ。」
「バカ!」
このビンタが神罰というやつか、と馬鹿な事を考えている俺はやはり人間だ。
最初のコメントを投稿しよう!