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「蒼央、映見ちゃん送っていきなさいよ。女の子一人じゃ夜道は危ない!」
「中田さん、家近いから大丈夫だって。」
「そうそう、こいつ見た目男だしな!」
「はいはい!どうせ私は背ぇ高いし髪の毛も短いから、男と間違われることが多いですよぉだ。
中田さん、また週末に来るね。」
くるっと右回れをしてその場をあとにした。
本当は送って欲しいくせに、強がって素直に「送って」と言えない可愛くない私がいる。
好意を持っているのに、上手くアプローチできない私がいる。
『私なんて』と思うことの方が大きい。
*****
とぼとぼと帰り道を歩いていると「麻倉」と少し後方から声が聞こえ、自転車のブレーキのキッと鳴った音とともに歩みを止めた私に、長身の私よりもまたはるかに高い影が並んだ。
「送る。叔母さんに言われたから仕方なくな。
つか、麻倉も銭湯なんてもんに行くんだな。」
通勤に使用しているロードバイクから降りた川嶋は珍し気に言う。
「行ったら悪い?」
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