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「俺もさ、行きたい風呂あんだけど、そこ、一人で入るのはちょっと……ってなトコでさ。」
はい?温泉や銭湯に一人では入りにくい所って、そんな所あるんだろうか。
受付の人が怖いとか?いやいや、この男はそんなことで怯むヤツじゃない。
もう見た目にお店がおんぼろで入りにくいとか?この男だったら冷やかしで行けると思う。
「……だから、一緒に行ってみないか?っていうか、行くぞ。」
え、いま私、誘われてたりする?
ちょうど私の住むアパートの前まで来ていたから、私は何も言わず方向転換し、道路側にある階段を2階へとそのまま上り始めようとした。
自分でも分かる……歩き方がかなりぎこちない。
「麻倉んち、ここ?週末は自転車買いに行って、そっからその銭湯な。あぁ、銭湯というか家族風呂だから二人でゆっくり洗い合っこしよう。じゃあな。」
川嶋の方をゆっくり向くと、ニヤリと笑った顔で手を挙げ、サッとロードバイクに乗った。
川嶋はペダルを漕ぐのが早くて、あっという間に見えなくなった。
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