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「神」への供物となった過去のある鴉夜は、残念ながらもう人間とは言えない。それでも人間である頃に悪魔の炯が契約を結び、「神」に隠される末路から既のところで逃れさせた。
そのために炯は、後に自らの体を失った。早い話、死んでしまったわけだった。
蛇を象徴とする悪魔の炯は、分身と言える小蛇を鴉夜に預けたままだ。それが生きているから、鴉夜は炯が生存していると信じて、年を取らなくなった少女の姿で探し続けている。
「アヤの一途さに感謝するんだな。今オマエをこの世に繋ぎ止めるのは、あいつとの『契約』だけだろうからな」
「仰る通りで。でもオレ、別に生き返ろうと思ってるわけじゃないんよ」
「……ん?」
仮にも悪魔である炯は、肉体の消滅が必ずしも死になるわけではない。こうして他者に憑依して、体を奪うこともできなくはない。
それでも今や、炯の望みは一つだった。
「オレは……ただ――……」
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