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鴉夜の故郷は、こことは違う、化け物の多い異世界の辺境にあった。先刻の妖魔と同じ世界の生まれだ。
多いと言っても化け物の絶対数は人間より圧倒的に少ない。何処の世界でも人間は多数を占めるらしく、神に赦された存在というのは伊達ではないのだろう。
ひっそりとした森の奥の集落、建前上は人間だけの原始的な村で、鴉夜の家は「金烏」という神を祀る神子の家系だった。会ったこともない兄が後を継いでいるが、一子相伝の家で第二子の鴉夜が随分遅くに儲けられたのは、村の災いとされた森の魔女、「黒鳥様」を討伐できる巫女が生まれると、金烏のお告げがあったからだという。
「黒鳥様を倒す、それだけがあたしの役目……別にあたしは、それで良かったのに……」
人間であるはずの鴉夜は、人間ならぬ「鬼火」の「力」を持って生を受けた。それで村を困らせる魔女を排除するのだと信じて、自らを鍛える生活に明け暮れていた。
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