_Side Aya.

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 鴉夜はその当時、身の内に溜める熱のせいで常に体調不良で、道を急ぐこともできなかった。険しい森の丘は方角を定めることもままならず、炯と何度も暗い夜を明かした。  あまりに苦しそうな鴉夜を見かねたらしい炯は、自分が悪魔であることを明かし、鴉夜の熱を炯が代わりに溜める契約を持ちかけてきた。このままでは討伐もままならないと、鴉夜はそれを受け入れた。代償は炯の(つがい)になることだった。 ――ダメ元でも言ってみるもんだなあ。っていうかあんた、相当ヤケだな?  鴉夜は役目を果たす以外の人生など考えたこともなかった。炯の好意が本気であるのは薄々感じていたが、ひたすら落ち着かなかったとしか言えない。  けれど、魔女を殺した後、自分はどうなるのだろう。鬼火以外に能のない人間は、無用の長物になるかもしれない。その不安は押し隠していただけで、他に自分が必要とされる道があるとは思えなかった。  だから炯の話に乗ってしまったのかもしれない。何か一つでも、未来を照らす灯りが欲しかったのだ。
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