_Side Aya.

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 正確には、それは母ではなかった。母に巣食い、母を魔女へと変貌させた「悪神」という神意――  いつの時代も、世の陰に隠れてヒトを唆し、太古から人々を悪行に導く黒い翼の神。今の養父が縁戚の炯を調査に派遣するほど警戒していた、古代の本物の「神」の一人だった。  初めから鴉夜は、金烏の家系に目を付けた悪神が、己の新たな器にするために作った第二子であるとそこでわかった。「悪神」を宿す母と金烏の父の間の子なら、天賦の神性を持ち、悪神にふさわしい何かの「力」を持つと見込まれていたのだ。  その結果が「鬼火」の存在なのだと、近い線まで途中で炯は気付いていたらしい。鴉夜が鬼火で溜める熱をよこせと言い出したのは、鴉夜に悪神以外との繋がりを作るためだった。  それで鴉夜は、悪神と一体化する――神隠しによって、鴉夜という存在が消えることを何とか免れた。  しかし、母と同じように悪神に巣食われた体は、隙を見せれば鴉夜の背に黒い翼を生やそうとする。先程の激痛はよくあることで、悪神と闘う発作と言っていい。  炯は負けるなと言ってくれた。悪神から解放される術を、共に探そうと約束してくれたのに……。
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