_Side Aya.

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 襟の内で鴉夜の首にじっと張りつく、悪魔の小蛇が温かい限り。  加えて、鴉夜の内に熱がこもらず鬼火が使えている間は、炯との契約は生きているはず。それが今の鴉夜を導く灯火で、呪いとすら感じる虚ろな青い炎なのだ。  悪神に祟られた後、鴉夜は橘診療所に連れていかれた。そこで使徒の仕事を引き受けることを条件に、一命を取り留めたと言える。  その後、悪神を祓う旅の途中で炯がいなくなる前に、炯は珍しく真面目な顔で鴉夜に言い含めたことがあった。 ――鴉夜。ヒトが『悪』に負けるのは、何でだと思うよ?  ヒトの心に付け入ることを得意とするはずの、「悪魔」の名を冠する少年。その目に映る鴉夜の姿は、ひどく危なげだと言うように、いつもの陽気さが炯の声から抜け落ちていた。 ――『悪』を扱うのなら、『ぬくもり』は必修事項だぜ。今すぐじゃなくていいけど、いつかは向き合えよ……自分自身でな。  いつの間にか、知らない内に知人宅のソファで横たわり、鴉夜は眠りこけていた。懐かしい夢の続きを思い出す前に目を覚ましてしまったことに、大きく溜め息をついたのだった。 *
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