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無我夢中だった瞼を上げると、映ったのは最初とまた同じ、儚く綺麗な天上の鳥。
悪夢の黒い鳥とは比べるべくもない、自称死神の不思議そうな白い顔だった。
「――あ、起きた。お前、戻ってきたの?」
「……――」
眠り続けていた死神が、彼の倒れている広場に出て来ていた。長い睫毛で隠していた蒼い目を開け、彼の横にちょこんとしゃがみ込んでいる。
眠そうではあるが、昨日より素直に笑う顔はやはり、かぼそい月の光にとてもよく映えていた。
黙って起き上がった彼が、辺りを見回すと、空は何の変哲もなく夕暮れが訪れている。
黒い雲の侵入は一応見当たらなかった。ただの夢だったのかもしれないが、彼はひとまずほっとしていた。
座り込む彼が何か言う前に、死神は二たび、余計な爆弾発言をいきなり口にした。
「ま、そう簡単には出られないか。何せお前、オレの羽を植えつけてるし」
「……へ?」
「ここはオレを閉じ込める檻。オレの羽を生やすお前も、条件は同じってことみたいだね」
「……は……?」
彼は一言、何それ。としか、言うことができなかった。
「植えつけてるって……何で……」
どうやら彼の背に、ちょくちょく痛みを与えるものが、その「羽」だろうとわかった。
何で勝手に、そんなことを。
よくわからないまま、それだけ尋ねるしかできなかった。
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