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 死神がしゃがむ膝の上で頬杖をつき、彼を見たまま無表情に黙っているので、彼は仕方なく質問を追加していた。 「何で俺を、ここに連れてきたんだ、あんたは」  羽を植えつけた、のくだりといい、彼を相方くんと呼んだ意味といい、死神は無闇に協力者を求めているわけではなさそうだった。  どうでもいい相手に、普通そこまではしないだろう。そのわりには彼が協力を拒んでも、がっかりした様子もない。  彼が初めて、死神の目をまっすぐに見て、真剣に尋ねたからかもしれない。  死神がにこり、と柔和に笑った。彼は一寸遅れて、可愛い……と、その端整な表情に思ってしまった。  思うと同時に、いや待て、と自らを押し留める。そういう場面じゃない、何故そう思ったんだ、とすぐに疑問が浮かぶ。  くすくすと、妖艶な擬音のつきそうな顔で、死神は改めて彼に微笑みかけた。 「お前、女たらしだね。ていうか、随分女たらしの、仲良しこよしの(あやかし)に憑かれてるね」 「……え?」  死神に魅入っていたことに、まるで気付いているような勘の良さ。  死神はそのまま、彼が現在彼であることの一つの答を、そこで教えてくれたのだった。 「お前が今、喋れてるのは、半分以上はそのペンダントの妖の思考だよ」  彼がずっと身に着けている、蝶型のペンダント。  それを差して死神は、彼に憑依する妖魔の存在をはっきりと伝えていた。
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